『解体工事における保険の必要性はご存じですか?』
残念ながら、解体工事はトラブルや事故の多い工事と言われています。
解体工事は建設業の中でも工事内容上、リスクの高い作業であり、過去にも様々な事故が発生しています。現在では解体工事の工法が、分別解体に変わったことや安全衛生教育の浸透により事故は減少傾向にあります。
もちろん事故は起きてはならない事ですが、もしも何か事故やトラブルが起きてしまったことを考えると依頼する解体業者が保険へ加入しているかどうかが重要になります。
<解体工事で多い事故・トラブル事例>
・重機の横転や車両の衝突
・重機や破片による近隣住宅や外構(ブロック塀等)、駐車車両の破損
・外壁や足場の崩壊や転倒による被害
・騒音や粉塵による近隣からのクレーム 等
解体工事中に起きた事故やトラブルに対して、被害者は損害賠償請求を行うことができます。損害賠償責任の有無に関しては民法で規定されているので内容を確認しておきましょう。
◆民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
このように故意や過失で損害を与えた場合、解体業者には損害賠償を支払う義務が生じます。
◆民法第716条 注文者の請負人に対する注文や指図について過失があったときは、注文者は、請負人が第三者に加えた損害を賠償しなければならない。
基本的に解体工事で第三者へ損害を与えてしまった場合の責任は、解体業者が負うことになります。しかし注文者が解体業者に「悪天候時でも工事の指示をしていた」といった事故に繋がる過失があったと認められれば指示をした注文者も賠償責任の対象になります。
<保険の加入状況を確認する>
何より安全への意識が高く、お客様のことを考えている解体業者であれば保険についても準備ができているはずです。しかしながら実際には保険への加入は業者によって差があり、また加入はしているものの補償金額が低すぎるなどの問題点も多く見受けられます。損害賠償保険に加入していない業者に依頼すると万が一事故やトラブルが起きた際、その矛先が依頼者に向いてしまうかもしれません。
◆確認事項
・損害賠償保険への加入状況
・賠償金額の支払い限度額
・補償内容(補償範囲)
業者を選ぶ際には賠償責任保険に加入しているかを事前に確認しておきましょう。場合によっては保険証券のコピーを提示してもらうことで確認ができます。
<騒音・粉塵は保険適用外>
これまで損害責任保険に加入していることが大切と説明してきましたが、解体工事で多いトラブルで保険に適用されない範囲があります。
それは騒音や粉塵が原因の場合で、予め予測ができ防げると考えられているため保険ではカバーできません。
解体工事で発生する騒音や粉塵によるトラブルは賠償責任では免責となっているため、近隣の方への配慮が必要となります。近隣挨拶による事前の説明、作業時間等の規定を守ること、騒音や粉塵を和らげるための養生や散水をすることで一定の対策は可能です。
できる限りトラブルを防ぐためには、近隣の方への配慮ができる解体業者を選ぶこと、万が一トラブルが発生した場合の賠償責任保険に加入していることを事前に確認することが重要になります。